慈悲の心を育む (Metta Meditation Instruction in Japanese)

慈悲(サンスクリット語で「マイトリー(maitri)」、パーリ語で「メタ(metta)」)を育む練習は、他者に向かって心を開いて行くための仏教的なアプローチです。古来の、非常にシンプルで直接的かつ効果的な方法なのです。

練習の中心となるのは、4つのポジティブな願いをあらゆる存在に送る事です。

・あなた方が安全でありますように

・あなた方が幸せでありますように

・あなた方が健康でありますように

・あなた方が安らかでありますように

 

あらゆる存在とは、私たちが大切に想っている人たち、そうでない人たち、また、あまり気にかけていない人たちを含みます。それだけでなく、私たち自身も含まれるのです!

もちろん(たいていの場合)、こうしたポジティブな願いを両親や自分の子供たち、ペットや先生、友人に送るのは簡単です。こういう場合、「マイトリー」あるいは慈悲の心はスムースに流れ出すことでしょう。

難しいのは、関心を持っていない人に対してこのような姿勢で向き合うことであり、嫌いな人に対してであればさらに難しくなります。

私たちは他者を何らかの分類にあてはめて見ようとしますが、それは時とともに、ある時はとても早く、またある時はもっと遅く、変わるものだということについて考えてみることは、「マイトリー」を練習する為の素地を作るのに役立つことでしょう。私たちが経験することは全て、無常なのです。

たとえば、スーパーマーケットで出会った名前も知らない人が恋人になり、それから妻となって、やがて、あまりありがたい存在ではない(時として)元妻になってしまうという事があります。1人の人が、3つのカテゴリーに移り変わって行ったわけです。

また、私たちの人の見方というのは、何らかの原因や結果の法則と密接に結びついている事に気づくかも知れません。これは不確かなものです。嫌な事があった日などは、他人に対して、あるいは基本的に好きな人に対してでさえ簡単に苛立ってしまうでしょう。子供の頃虐待を受けたというような場合には、世界全体が自分の敵であるかのように感じて、復讐してやりたいと思うかもしれません。美しく晴れた春の日なら、時折全ての人が素晴らしく見えて、あらゆるものに恋をし、最高の気分になってしまうかもしれません!

ですから、原因と結果の法則は世の中に対する私たちの態度を決める土台となり、私たちもまたその原因と結果の法則に影響を及ぼし得るのであり、事実そうなのです。ネガティブな習慣的パターンに支配されないようにする為にマインドを深く鍛えることは役に立ちます。

そして最終的にはそれも無意味になり、私たちは最も根本的な本質へと集中してゆきます。私たちが開かれて、クリアな状態で、完全に今ここにある状態とはどんな感じでしょうか?私たちの本質とは何なのでしょう?私たちは本当に、実際に他者が苦しむ事を願うでしょうか?私たちは自分たちの苦しみのための原因や結果の法則を作り出したいと願うでしょうか?心を開いて自分達と他者のためにポジティブな願いを送れるようにするはずだったのでは?私たちは本当にそんなにひねくれてしまったのでしょうか?

「マイトリー」の練習はシンプルです。静かな場所でただ楽に座り、目を閉じます。そしてまず、あなたが愛している誰かを思い浮かべます。先に挙げた4つの願いをその人たちに送りましょう。心に浮かぶ人にそれぞれの願いを繰り返し送っても良いし、願いが叶えられて状況に作用するところを思ってみても良いでしょう。これに関しては皆さんの創造性を発揮してください。

続いて自分自身について、それからあなたの心がニュートラルに働きかける人(あまり良く知らない人や、既に強い感情を抱いたことのある人)へ、最後に思い切って、「敵」にも願いを送りましょう。敵となる人を選ぶにあたって、その対象となる人が変わったりして迷う事があるかも知れませんがそれでも構いません。既にお話ししたように、昨日の敵が明日は友という事だってあるのですから。また、練習の中でいろいろ試す間に浮かんでくる事にただ気づき、そこにスペースを与えてやるというのでも良いのです。

最後に、慈悲の心、思いやりがあり優しく、愛に満ちて開かれたハートをあらゆる存在に向けて放ち、その全て(友人、自分自身、ニュートラルな思いを向ける存在、敵、人類、動物、亡霊-思いつく全ての人)にあなたの願いを届けましょう。それから瞑想を解き、しばらく静かに座ります。

ある人にとっては、この練習は感傷的すぎると感じられるかもしれません。最初は私も、ちょっと無邪気で優しすぎる感じがすると思いました。しかし、これはブッダの時代にまで遡る古来のプラクティスであり、驚くほど力強い効果をもたらし得るのです。

 

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